(3)『カライ派』――タルムードを拒否し排除した原理主義的ユダヤ教 (『歴史読本』No.554より)

前記事からの続き。

パリサイ派やタルムードの関連の前記事でも書いたが、

パリサイ派のように
モーゼの律法の破壊を企み、選民意識が異民族排除にまで
高まったような教義のタルムードを遵守する宗派もあれば、

タルムードを拒否し排除しようとし、モーゼの律法を
遵守しようとする原理主義ユダヤの宗派もあった。


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《ケストラー著『ユダヤ人とは誰か――
第十三支族、カザール王国の謎』(邦訳、三支社刊)は、
現在ユダヤ人口の90パーセントを占める
といわれるアシュケナージユダヤは、
実は八世紀にユダヤ教に改宗した
トルコ系のカザール族の子孫であった
という衝撃の書であるが、同書百二十五頁に、
十二世紀末のクリミヤ・カザール・ユダヤ人が
信仰した「カライ派」なる宗派が登場する。

その叙述によると、
カライ派(カライム=律法を守る人々の意)
とは八世紀のペルシャで生まれた、タルムードを
否定し排除する、原理主義ユダヤ教だという。

ところで、デ・グラッペ著
『世界攪乱の律法ユダヤの「タルムード」』
(久保田栄吉訳、一九四一年刊)によると、
この「カライ派」の成り立ちは、少し違っている。

それによると「カライ派」とは、
パリサイ派の秘密結社がユダヤ人社会の中で
勢力を伸長していったのに対して、
もともとのモーゼの律法を遵守しようと
するユダヤ人たちがつくった一派であり、
その勢力は六〇〇年ころには、強大な一派とまでなった。
そして七七五年、バビロンにおける
ユダヤ地下政府の首長」の兄弟、アナヌスが
このカライ派に加担して、著しく勢力を増した。
しかし、十三世紀以降は次第に衰退した
(同上書、九四~九五頁)とされている。

カザール王国がユダヤ教に改宗したのは、
七四○年、と推定されているから、ちょうど、
ユダヤ教徒のなかで、カライ派の勢力が
ピークに達しようとしていた時期と符合する。》


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歴史読本』No.554
太田竜さんの記事、『ユダヤの対キリスト教謀略史』(p.64)より