男女の記憶のズレについて 映画「恋の手ほどき」

恋の手ほどき」(1958年)という映画で、
昔交際していた男女(60~70代設定か?)が、
女性マミ-の孫と、男性オノレの甥が、
海辺ではしゃいでいるのを見ながら、
昔話をしているシーンがある。

二人の記憶はみごとにズレるのである。


「よく覚えてるよ。9時に君と会い」
「8時よ」
「君を待っていたら」
「あなたは遅刻してきたわ」
「皆と一緒に食事をしたね」
「二人きりだったわ」
「テナーサックスの歌が流れ」
バリトンよ」
「4月の月がまばゆかったね」
「6月で、あの日は闇夜だったわ」

「あの金曜日」
「月曜日よ」
「馬車に乗って」
「歩いたわ」
「君は手袋をなくし」
「なくしたのは櫛(くし)よ」
「晴れた夜空で」
「雨だったわ」
「ロシアの歌が流れ」
「スペインの歌よ」
「君はゴールドのコートを着て」
「ブルーよ」

こういったズレは、実際、いつの時代も変わらない。

私が記憶に残る初恋の人が着ていたセーターは
白だったと書いたが、実際はグレーかベージュだったかもしれない。

雪の思い出の中で、純化され、真っ白に記憶を変えてしまった
のかもしれないのだ。

それで、この映画を思い出した次第である。