(2)M市ストーカー殺人事件について……ワタシの妄想的雑考

君が恋愛中だったとしよう。
君は恋人との一体感を味わい至福感に包まれた。
君はその思いは永遠に続くものと信じた。
しかし君は知る。
別れが訪れた時、それは幻想だったと。

別れは彼女から切り出してきた。

もし君に思いが残っていれば、幸福な夢を再び見たいと
彼女に、ふとメールで愚痴ってしまうかもしれない。

優しい彼女は、君がいい人だとは知っているから
優しく慰めてくれるかもしれないし
諦めを諭してくるかもしれない。
お互いがんばろうね、と、励ましさえしてくれるかもしれない。
だが、無視されるかもしれない。

どんな返事が返ってこようと
君にはメールの文章など目に入っていない。
元恋人との幸福だった頃の思い出が蘇ってくるからだ。
君の胸は痛んだ。
君の彼女の思いやりメールは、かえってつらい現実を君に突きつける。
彼女は、君の傷付いた感情などに興味はない。
さっさと気持ちを整理して、次の人生に向かっているのだ。
君は未練を残したまま取り残された。

たとえば、それからの君は、
恋は終わったのだという現実を受け入れられなかったとしよう。
元恋人への恨み言、愚痴が次々湧いてきて、ついメールしてしまう君。
彼女からの返事は段々来なくなる。
君はそれからも、彼女にありったけの罵声文を書いて送った。
メールは着信拒否になっていた。
君は怒りに震えた。
もはや君には、元恋人に対する憎しみの感情に足を取られ
冷静に自分を見つめられなくなっていた。

すでに、君にとって至福の愛の記憶は、執着に取ってかわられていた。

あの日に帰りたい。
あの時間に戻りたい。
優しかった彼女の隣でもう一度眠りたい。

*****

以上は、妄想ストーリーである。

*****


S子さん殺害後、Iはなぜニヤリと笑ったのだろうか。

『恨みがある』から、憎んだ対象を殺して
『あ~、ザマーミロ。すっきりした!』
とでもいうのだろうか…

これで、人生に悔いは無いとでもいうのか?

警察が介入しても、むしろ介入したからこそ
犯人の感情を逆撫でして起きてしまったともいえるこの事件…
警察の無力が取り沙汰されているのが目立ったという印象で
事件の異常さは脇役にまわったように感じた。
だからこそ、記事にしたいと思った。

『警察は無力だ』『介入したことがアダとなった』
と言う人もいる。

ではどうしたら、こうしたストーカー殺人事件を防げるというのだろうか?

警察は、ストーカーの内部に芽生えた『殺意』から
これからも被害者を守る事が出来るのだろうか。


*****

M市の事件は、過去のストーカー殺人事件と違い、
あまりにサスペンスドラマのようにベタすぎるのと
加害者、被害者、どちらも若く美しすぎる気がする。
だから、他の同類の事件より悲劇的に見えたし、興味を持った。

なぜIは、被害者の命を奪い、自らの未来を悪魔に売ったのか。

これまで同類の事件を起こしたストーカー達に
若いイケメンはいただろうか思い返してみた。


そういえば、少し前に、ある女が親戚中を巻き込み
まるでカルト宗教や893みたいなやり方で女王様のように君臨し
逆らう親戚の娘をストーカーし拉致監禁殺人事件のような
異様な事件があったなあ……

浮かべるだけで、ずいぶん複雑怪奇な事件が多いもんだと
あらためて思う。

女の絡んだ事件は別の機会にしたい。

んで~。

すべてを把握はできないが
イケメンのストーカーなんて、あまりなかったような……
そんなふうに記憶しているワタシ…

あ☆
北海道に監禁王子がいたっけ。
ホスト風のイケメンで、女性を監禁して逮捕された事件を覚えているかな?
だが、ストーカーではないから除外。

大概ストーカーは、かつては頭が良くオタクっぽくて
決して醜くはない、どちらかといえば地味で普通な印象の人々が
犯行に及んでいるのが目立たなかったか?
殺人まで行かなかったとしても、彼らはたいてい頭が良かった。

ストーカー殺人で思い出すのは
米国で、自分と縁もゆかりもない有名人を狙う
エグゼクティブ・ストーカー殺人。
また、見知った職場の同僚に殺された事件や、
同性愛者の女性に逆恨みされ、殺された女性の事件もあった。

米国のケースは、理不尽すぎる事件が多い。
そう思っていたら、日本もそうなってきた。

つきまとい、一方的に恨むのは、かつて夫だったり恋人。
脅されたりつきまとわれ最後は殺されたケースが何件も。

これは、ドメスティック・バイオレンス家庭内暴力
による殺人事件に繋がるだろう。


DV(ドメスティック・バイオレンス)犯罪について知る事は
ストーカー殺人に至る加害者の心理について
かなり参考になりそうな気がする。

こうした事件に興味を持ったある年には
DVで亡くなった女性が60人くらいいて驚いた。


DVで妻に暴力を振るう夫は、凶暴な反面、
非常に優しい面があり感情の起伏が激しい。

妻が優しい夫に幸福感を感じていると、夫の性格が豹変、暴力を振るう。
初めは自分に落ち度がある感じるが、夫の暴力は治らなかった。
夫は暴力を振るったあと『もう二度としない』と謝罪するが
また暴力を振るう。
だが、また謝罪し、優しい夫に戻り
また暴力、謝罪、暴力…その繰り返しだ。

しかも暴力はエスカレートし、妻は体中傷だらけになってゆく。
傷の治る暇さえなく、絶え間ない暴力は続き
思考力さえ失われてゆくのだ。

その繰り返しの中で、妻はどんなに暴力を振るわれても
いつかは優しい夫に戻ってくれると期待して
危険な場所から心理的に離れられず、最後に殺されてしまうのだ。
妻は『この人には私がいてあげなくちゃ』と思い込むらしい。
これは心理的に『罠』に陥った状態である。
共依存』という心理状態が一時期、流行った。(懐かしい)
今では、DVは病気だと捉えられているが…

(DV問題は、夫が鬱になる場合にも繋がってくるテーマだろう…)


*****


前述したように、ストーカーをする人々は、かつては
頭の良いオタク系の人が目立った。
なぜストーカーをやるのか、今よりはわかりやすかった。

まず彼らは頭がよいが気が弱く、女性に免疫のない事。
また『主役願望』がある事。
もちろん、それだけではないだろうが。

M市の事件の加害者は、いかにもモテそうな容姿である。
S子さんに『恨みがある』彼は
振られた以外に、恨む出来事が何かあったのだろうか。

周囲からIは、主役級だと認知されていたと想像する。

そして、被害者S子さんには
自分が交際する人間についてそれなりのこだわりを持ち、
理性的に判断を自己に下せる賢さも持っていただろうと
ワタシは勝手に想像する。

Iに『恨みがある』とすれば、振られた原因か?
自尊心を傷付ける事を言われたり、ほかの男と比較されたり
差別言葉を言われたりしたのだろうか。
それともアレが早いとかヘタとか、何がどうたらこうたら…

意外にもくだらない事かもしれないが、重大な事かもしれない。
殺害に至るほど、恨む内容なのだから。

だから……

ここが重要なのだが
Iにはきちんとした『殺す理由』は
動機はあった訳である。

つまり、このM市のストーカー殺人事件は、

『これは、加害者の一方的な思い込みや妄想による、ストーカー殺人事件である』
と単純に片付けてほしくないと私が思う理由である。

私はこの事件は
『純粋に恋愛のもつれによる犯罪事件である』
と思っている。

米国などにみられた病んだストーカーが、思い込みや妄想で
自分の期待に応えてくれない友人や知人でもあった
ターゲットを殺害するケースや
日本にもあるが、離婚後、元妻を脅し、つきまい、
身勝手にも、新たな元妻の可能性に嫉妬して殺害したりする。

そういった重く病んだケース――
劣等感が原因で相手に期待し甘え、入り込み
自分に応えてくれないから裏切られたと言い責め
憎み、最後には支配し、殺害し、時には自分も死ぬというような…

前向きに生きようとしている人間に立ちはだかる彼らと
このIは、限りなくなく似ているが、
同時に、まるで違うような気もしてくるのである…


つづく


(修正しました)