生ききれない思いのなかで生きる貴方へ

フロイトはメスメルの催眠研究がなければ、
デカルトを撃ち落とすことはできなかった。

そのフロイトの心理分析の本をはじめとする
心理学関連本を何冊読んだって、
人生の答えは見い出せないかもしれない。
経過中は充実した気分かもしれないけれど。
だけど、でも、その時間は無駄にはならない、きっと・・・・。

生ききれない思いのなかでもがく人は多い。

若い頃の話である。
アルバイトで入ったある卸売り業の会社の先輩で、
虚しさに襲われると、酒を飲み、
発作的に手首をカッターで傷つける人がいた。
周囲は誰も、彼のこの「自殺願望」を知らなかった。

恋人のために頑張ろうとした彼が、
ある日、すっきりした表情で
「結婚するんだ。俺、幸せだよ!」
と親友に言ったその数週間後、
ある場所で遺体で発見された。
遺書もあり、自殺だった。

「死にたくないよ。だけど、生きてゆくのもつらいんだよな・・・・」
「何もかも面倒くさいよ。病院通いの文無しの俺に、
母親が金をくれって言ってくるんだ」

昔幸福だった頃の懐かしい家族への郷愁を抱く彼。
人生への絶望をよく語ったという。
彼の恋人は彼の自殺願望を知っていた。
だが、同じ部署にいた恋人でさえ、
彼が死へ向かう事を止める事はできなかった。

「人間はなぜ生きているんだろうか」
「人間は何のために生きているんだろうか」

そういった疑問を持っていた彼は、
本当にその解答を探し求めようとしていたし、
恋人との将来のために、日々努力してもいた、
だが、結末は悲劇に終わった。

「未来に希望が持てない」
「もう働きたくない」
と死ぬ前にもらしていたという。


生ききれない思いで苦しんだことが私にもあった。
というか、この記事の出来事も、その時期に入る。
20代の頃は、虚しさや、不安感や、脱力感、焦燥感などが、
私の日常を襲っていた。
周囲からは「あなたは恵まれているね」とよく言われていた。
私は、そのたび反発の感情が湧いてきた事を覚えている。
「誰も私を理解してくれる人間はいない・・・・」
そう思ったものだ。

前述した彼のことを思い出しながら書いている時、涙が出た。

彼が亡くなる少し前、数人でお茶を飲んでる時に、
どんな話題の流れでだったかは覚えていないが、
彼が私に言った。

「いいなあ。いい親がいて・・・・・・」

これが、彼の私への最後の言葉だった。