失恋──大人の女性への階段?

わたしは思うの だれかと一夜をともにするのは 自分のすべてをさらけだすことだと・・・


でもそれで恋の行きつく終着点をしってしまって 平気になると たいていの女の子はあつかましくなるの


・・・でも 終着駅を出れば まだしらない道があるはずだわ


・・・だから しってからこそ上品でいたい


,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,

ボブとエドナンは、
パリの街で短期滞在を楽しんでいた。

ボブの仕事の美術館巡りに便乗して、
旅先の女の子という女の子を口説いては
デートを楽しんでいたエドナンだったが
実は、
エドナンは二ヶ月前に結婚したばかりだった。

ボブはエドナンが女の子とつきあい出すと
邪魔をしてぶち壊した。
「はっきりいわせてもらえば
ローマからこっち
おまえのやってるのは
恋とよべる代物じゃない!
じつに低レベルなおふざけにすぎないよ。
まったくの無価値!」

「きみが遊びで恋するかぎり
ぼくはどこまでも邪魔をする。
ホントの恋だったら
邪魔されたって続くはずさ」


ある日、二人は、
一人の男の子に見える女の子と出会った。
名前をイブという。

イブは、同性愛者で女嫌いの
「半径3メートル以内には女性を寄せつけない」ボブが
珍しく話をした女性だった。
飾らない嘘の嫌いな
自分らしく生きようとする女の子。

イブとエドナンはつきあう。

ランボーヴェルレーヌのように」1977年 竹宮恵子

「変奏曲」(サンコミックス)に収録された
30ページほどの短編コミックである。

イブは結局失恋する。

エドナンのもとに
愛妻アネットがやってきて
恋のゲームは終わった。

冒頭の文は、
イブがボブとエドナンに語った言葉。

数ページで
具体的な表現もされず、
何度かのデートを重ねて、
一夜をともにしたと思わせるような
上半身裸のイブの寝姿。

レディコミの過激さが
いつから始まったのか忘れたけれど
風と木の詩」の作者だから、
おとなしい表現というわけでもないが・・・

実はイブは初めから知っていた。
エドナンに妻がいることを。
彼は有名なバイオリニストだったからである。

イブはボブの腕の中で泣いた。

パリを離れる列車の中で、
ボブは思い出していた。
イブの言葉を。

「ねえ──ボブ わたし思うの


失恋っていうのは 相手の心の中に 自分がいなくなることじゃないわ


自分が愛する気持ちをなくしたとき──恋を失うのよ


だから わたし まだ彼に恋してる


ボブ あなたにもよ」


この短編で
最も印象に残るのはイブだ・・・
なぜなら、魅力的に描かれているので。

だけど、

男のゆきずりの恋愛ゲームの相手として
弄ばれ、傷つけられただけの話だよなーって
思う私なのだった。

ばかだなあイブ・・・・


それでも
質のいい男二人に目を付けられ、
二人の中に深く食い込んだ女性ではあった。

ここでいう

「質」

とは、
まずエドナンが
みさかいなく女性を口説きまくる
さかりのついた
悪いオトコではあるが、

愛妻家

であるということ。
かろうじての「質」ではあるが・・・

彼の恋愛ゲームの後見人?のボブは
恋愛のルールを熟知していながら、
好奇心強く、
個人的な感情に口を挟まない。
(恋の邪魔はご愛敬♪)

イブの傷心に接してボブが沈黙でいたこと

これが最も質のよい行いだと思う。


大人の女性になるために通らねばならぬ道

──それは、恋の傷を乗り越えることである。

自由に性をたのしむために。
自由に会話をたのしむために。

それは大人の女性の理想としてある。
国や人の内部の、
一部の文化圏では。