ルネッサンス画家の父 ジョット 硬直した伝統様式の縛りから芸術を解放した男
エンリコ(・デッリ・スクロヴェーニ)
「そうなのだ。父はダンテの[新曲]に登場させられてしまったほどの悪名の高さ。
私はそんな父を恥ずべきなのかもしれないが私には
優しい父だった。
ならば、私にせめてできることは、父に恩返しすると
いう意味において、彼の後世に残るであろう悪名を
少しでも少なくするために奔走することなのだ」
ジョット
「デッリ・スクロヴェーニ殿。それは立派なお心がけです。しかし、礼拝堂の一部があなたの父上の贖罪がテーマと
しても、あとの壁画まで同じテーマでは、暗き淵ばかりに
立ち尽くしているようです。
・・・・私としては、もっと天にも上る境地の作品も入れたいと思うのです」
エンリコ
「・・・・むろん、父の罪のみならず、人間全体の罪が消えることを願って、ディ・ボンドーネ殿の手によってこの礼拝堂
に、人間たちの苦しむ姿を奇跡的に救う神の力のような
ものをも描き出して頂きたいと思っている。
原罪というものは消え難いものかもしれないが、それでも
奇跡はあるのだということを私は信じたい」
ジョット
「デッリ・スクロヴェーニ殿。すでにキリストがこの世に出られたことこそが奇跡ではありませんか?
私は、あなたによって、後世の為、人々の為の仕事に
着手できることを喜んでおりますが、私にこのような
至福を与えてくださったのはほかならぬあなたの父上の
罪業がきっかけなのですから・・・・すでにもう
父上は一人の男を幸せにしているのです」
※画像は『荘厳の聖母』 ウフィツィ美術館(1310年頃
(修正しました)