『コモン・センス』トーマス・ペイン著 より抜粋……〔社会はどんな状態においても有り難いものであるが、政府はたとえ最上の状態においてもやむをえない悪にすぎない〕

《社会と政府とを混同してしまって両者の間にほとんど、いな
全く区別をつけようしない著述家たちがいる。
ところが両者は違っているばかりか、起源からしても別なのだ。
社会はわれわれの必要から生じ、政府は我々の悪徳から生じた。
前者はわれわれを愛情で結合させることによって積極的に幸福を増進させるが、
後者は悪徳を抑えることによって消極的に幸福を増進させる。
一方は仲良くさせようとするが、他方は差別をつくり出す。
前者は保護者であるが、後者は処罰者である。

社会はどんな状態においても有り難いものであるが、
政府はたとえ最上の状態においてもやむをえない悪にすぎない。
そして最悪の状態においては耐えがたいものとなる。
なぜなら政府のない国でなら生じるかもしれないような不幸を
政府によって味わわされ、悲惨な状態にさらされるなら、
苦しみの種をみずからまいたことを反省することによって
不幸な思いが増大するからだ。》


●『コモン・センス』
トーマス・ペイン著 小松春雄訳
岩波文庫
1976年4月16日第1刷発行
2014年4月4日28刷発行
(p.17より抜粋)