【スピリチュアルな出会いの物語】 (1)お金持ちのサマーセーター ……………「愛」の試練が訪れる時

この物語は、2007年9月2日から投稿されたものを元に、書き直した創作である。
18記事あったが、1コマの内容が短かったので、まとめてコマ数を減らそうとしているうちに、
書き直す気分になった。
Yahoo!から引っ越すうえで、記事を整理しなくてはならなくなって、ボチボチやっている。

今風のスピリチュアル的な内容であり、12年前は、今ほどオープンにしてよい内容
とは思わなかったので、書いた当初は全公開なれど、後に限定公開にしていた。
しかし、移動用にオープンにする上で、読み返していると、懐かしいというか、
本当にあった出来事なので、まったく忘れていた記憶が蘇ってきて、不思議な気持ちになる。

これは、小説の下書きのような、要素だけの内容にもかかわらず、いや、だからこそ、
斬新で(笑)我ながら面白かった。
あらためて、少しだけ膨らませて、書き直してみた。終りまで書いていないので
書き終われないが、書き直しているうちに、思い出して、続きが書けるかもしれない。

そうそう、百合さん(仮名)とは、神戸のH神社にも一緒に出かけたんだった。
そのほか、そういえば、スピリチュアルな会話を当時は沢山した。(遠い目)
例えば、コンサートに行く時、大金持ちのお嬢様の百合さんは簡素で地味な格好、
ビンボー人の私が、チカラ入れたスーツ姿というような、実際にそんな感じだったコトも事実で。
1980年代後半は、出会いがメチャクチャ不思議で、多くの出会いがあったが、彼女との出会いは、
特に不思議で、素敵な出会いでもあった。

あれほどベッタリした付き合いだったのに、お互い、離れる時期が来ると、スパッと自然消滅。
コレも不思議。





(1)お金持ちのサマーセーター ……………「愛」の試練が訪れる時



はじめに

これは本当にあったお話。
何の為に、この出会いはあったのか。
今もわからない。

人はこの世とあの世を旅する永遠の魂の旅人だというが
前世の縁(えにし)が引き寄せあった恋人どうしの物語の
目撃者になれという、
チョイとお得な役割に引き寄せられた私。

とびきり、スピリチュアルな出会いだった。
物語の始まりから終わりを、目撃した私。
ある期間、お互いを唯一のものとして、出会えていた不思議。

夢から覚めると、昨日までの日々が、
突然、モノクロの過去になった。
その時、新たな旅が始まった。


1983年と1986年は、奇妙な年だった。
それまで、持っていた感覚とは、別の現実が、外界を覆っていたからだ。
この物語は、その時期以降に起きた事象を元にしている。
それ以前も奇妙だったが、あまりにも、奇妙な事が続いたので、慣れてしまったのかな。

2011年以降も、あの頃のような、おかしな現象が起きていたが、
1980年代のような受け身ではなく、ありあまる情報の中から、見えてきたのは、
今は、人間が、イマジネーションの力で、意思を持つ事で、自分から変えてゆくのが
未来だという事。
時代が変わったのだ。

重要なのは、この不思議な出会いにおいて、私は、人生の主役だったという事。
そして、今も、基本的に、真の意味で、主役のココロをキープしている。
ありがたいなあ、と思っている。

他人を、自分の土俵に引き寄せて、言葉や態度で他人を圧したり、他人に責任を負わせたり、
他人に自分を認めさせたりするために、あらゆる手段を用いる人々は、ある意味、人生に
アグレッシブで、アヴァンギャルドで、刺激的かもしれないが、いずれ、本性が晒されるだろう。
そういう罠に陥ったような時期は、誰にでも確かにあるが、罠なのに、気付けないのは何故だろう?
世界中が、そんな罠に、絡め取られているような気がする。

ほんとうに自分の人生の主役になっている人は、他人を巻き込んで、意味のない比較や、
意味のない自己主張をする必要がない。
すでに、基本、幸福だからだ。
その幸福を、壊そうとする出会いが溢れているのが、外界──


見えない世界を信じきれない時がある。
迷いの道(罠)に入り込んで、輝きを失っている時だ。

現実社会で、誰かの為に生きてるような時間というものがある。
誰かが主役で自分はワキとして、役を演じている時期……
だけど、いつかはそこ(罠)から、1人、飛び立たねばならない。

自分に自信を持って、他人を巻き込まず、主体的に、勇気を持って
人生の主役でいつづける人々に、この物語を贈りたいと思う。

あなたは、決して、1人ではない。
人生の裏も表も味わっての、あなただし、つらい時、楽しい時も、両方が、あなた。

これは、そういう境地に至った女性の、ひとつの愛の試練の物語。

登場人物、団体、職業は、すべて変えてあります。起きた出来事は、事実を元にしていますが、人物名、団体の業種、設定など、すべてフィクションです。




◾1◾

当時、私は疲れやすい体質だったが、まだ、自分の感情をコントロール出来ているうちは
良かった。罠のような人間関係に苦しんだあと、沸沸と湧いてくる怒りや憎悪に心が痛め
つけられて、とうとう身体を壊してしまった。
自分の生き方の間違いに気付いたのは、病院の渡り廊下で、太陽の輝きを、ジッと見つめて
いた時だった。私は、思わず、手足を動かしていた。モダンダンスの動きなのか、太極拳
動きなのか、自分でもわからなかったが、体重を右足から左足、左足から右足に移動させながら、
腕をゆっくりと、太陽という観客に向かって大きく動かしていた。
太陽は、バリバリ音がしているように思えたほど、強烈に、光を私に放射してきた。踊り
ながら、私は、自分の中に、太陽の熱を感じていた。太陽は、わかっているよ、と言い
ながら、光を強め、踊りがピークに達すると、やがて、雲に遮られて、薄グレー色に
覆われていった。
衰弱していた私の身体。不思議なことに、青白くなっていたほおに赤みがさすのが、鏡を
見なくてもわかった。この10分ほど後に、私を診察した医師は、
「がんノイローゼですね」と言った。「どこも悪くないと思いますよ」と。
「でも、フェリチンが……貧血気味だと言われて、ここに来たんですが」
「食生活で改善できます。舌を見てみましょう。……まあ、ちょっと、荒れてますが」
「大丈夫なんですか?」
「外で待つほかの患者さんと、比較してみて、どう思います? あなた、元気そうですよ」
「そうですか……」
渡り廊下で踊る前は、廊下で待つ患者さん達と同様、青白く顔をしかめていたし、わりと
暖かい日だったのに、寒気がして、震えていたのだが。

百合さんと出会ったのは、この日より、ずっと前のことだったが、彼女との出会いも終盤
に近い時期のことだと思う。もちろん、私が、怒りや憎悪を抱いた相手は、彼女ではない。
私は恋をしていた。だが、その人は癖のある人物で、私を見事に振り回してくれた。彼女
が、その人物や、周辺状況と絡むことによって、私の精神状態が多少悪化したが、それでも、
私の衰弱の原因は、百合さんではない。
百合さんは大人だった。彼女の他者への関わり方は、身勝手なものを動機としないもので、
それが本来は当たり前なのだが、当時の私の周辺には、自分の欲求の為に、他人を平気で
裏切るような人間ばかりがいた。その事に気付いた時期で、そういう人々から、離れよう
としていた時期でもあった。
自分の周囲というのは、自分の心の表れだという説がある。すさんでいた自分の心が、
すさんだ人間関係を引き寄せたということか。
と言いたいところだが、実際には、私の知人・友人は、当時はかなり多かった。私は、
出かける事が好きで、かなり、積極的に、いろんなジャンルの人々と会っていた。
今思えば、当時は活動期だったのだ。神戸で自分らしさを取り戻し、戻ってきてからは、
昔のすさんだ知人と交流を再開した事が良くなかった。


◾2◾

◾2◾

ある休日のことだ。あるコンサートに向かう途中、百合さんはニットのサマーセーター
と麻のスカートの職場でのカジュアルな服装のまま、職場から直接、私と待ち合わせた
茶店に向かっていた。彼女の会社は水曜と土曜休み。どちらだったか、記憶していない。
私は新調した白いスーツを着て手ぶらだった。ケーキと花束を用意していくからね、と
言った彼女と、某ターミナル駅に近い喫茶店で待ち合わせた。
私は楓。当時の年齢は秘密。まだ若いと言われる年齢ではあった。

「楓ちゃん! こっちよ。こっち」
「百合さん! 会場はホテルのホールなのに、カジュアルな装いだね」
「変かな。時間がなくって」
「ううん。変じゃないけど。私には、わからない。ああいうホテル普段行かないもの。
宇宙人と交信してる人の取材で行って以来……」
「なあにそれ。私は、よく待ち合わせに使ってる所よ。こんな感じでも、いいんじゃない」
「慣れてる人はいいって。……神谷さん、きっと緊張してるよ」
「来たと知ったら驚くでしょうね。きっと。それに、この花束よ!」
「しかも、前から4番目の席。こっちがドキドキしてくる」
「来ないと思ってて、こんなおっきな花束を差し出されたら……?」
「きっと驚くね。あ、百合さん、花束、私が持つ」
高そうな真紅のバラの花束は、全部でいったい何本ある。かすみ草との絶妙なバランス。
この豪華な花束をもらった人は、今日の日を、忘れることはないだろう。

薄水色のニットは百合さんに似合っていた。彼女は、当時の私のもっとも親しい友人だ。
年齢が10以上離れていたが、まったく気にならなかった。
その日歌う彼女の知り合いは60代の女性。絵を描き、年に何ヶ月か異国に暮らし、
歌を歌い、ドイツ人と離婚した娘が生んだ子を育てながら、社長業もしていた。
要するに、ジャズ歌手が経営する教室の生徒の定期発表会だ。

神谷さんとは会った事があるが、年齢不詳の若々しい人だった。どういう知り合いかは、
あえて聞かなかった。百合さんの周辺は、不思議な縁で溢れていて、いろんな職業、年代、
個性の人々がいた。第一線で活躍している人もいたが、私も百合さんも、変わった人々と
出会っていたので、お互い、面白い個性の知人友人の話題は、特に盛り上がっていたよう
に思う。
彼女は、個性的な人々とどこで出会っていたのか。今から思えば、起点は、とある公園の
見える大通りに面した、カフェ併設のデッサン教室らしかった。彼女から紹介された画家
のつながりは、ここで得た人間関係が種なものだった。
私は、もっと都市のカルチャーセンターでデッサンを半年くらい習ったことがあるくらい
で、絵画の教室や学校をほとんど知らなかった。もちろん、そういう所に通っていた知人
が、かなり自由で面白い個性に変化していたのを見て、興味を持ったことがあるが、何故
か、本能的に絵画関係は避けていた。

百合さんの以前通っていたデッサン教室に行ってみたことがある。隣が小さなカフェで、
コーヒーが美味しかった。客の会話から、このカフェと、デッサン教室のオーナーが、
同じ人だと知った。
要するに、ビルのオーナーが、デッサン教室を経営していて、講師もやっていた。
デッサン教室のオーナーは同性愛者の噂があった。偶然、彼が、午後3時に、いったん
カフェを閉める時に出くわしたが、長身白いシャツの若い男性と一緒だった。それだけでは、
噂の証拠にはならないが、お洒落っぽい2人が並んでいると、外国映画のワンシーンのようで、
ふーん……確かに、何か、自由な雰囲気が、デッサン教室にはありそうだ、そこに通う人々
に影響しそうだな。そう思った。
(数年後、デッサン教室は、進学塾になり、カフェは、古書店になっていた)


◾3◾

百合さんと知り合ったのは、共通の友達の山本さん(女性)の紹介だった。何かを
話していて、それが、何についての事だったか、それにまつわる共通のことが
きっかけだったが、昔のことゆえ忘れてしまった。山本さんによれば、
「……に詳しい人で、社長令嬢だからツンとしてるけど、親切で、とてもいい人」
ということだった。
山本さんは、男っぽくて、サバサバしているように当時は思っていたが、実際は、女性の
特質を内側にかなり持った人だ。だが、表面は、ストレートにものを言う、語り口に愛想
というものが、まるで感じられない。発想は、かなりユニークで、頭は良いのだろうが、
不愉快な人で、だが面白い人でもあった。

初めての出会いの時、百合さんは、水色のニットのアンサンブルと無地の白いスカート。
神谷さんのコンサートの時も、薄水色のサマーセーターだったが、初めて会った時は、
それより濃い色だった。カーディガンを脱ぐと同色のサマーセーター。二の腕が透き通る
ような白さ。背中まである艶やかな黒髪。形のよい唇。長い首。
私はといえば、破れジーンズと、その頃好きだったデザイナーのジャケットを着ていた。
私の描写は、1行でおしまいである(笑)

私も百合さんも初めて会ったのは、前もって、寿司とか天ぷらなど和食が、大好物と
いうことをお互いに知って、山本さんが百合さんとよく使っていたという、大通りから
一本入った、目立たない通りの、お値打ちで美味しい和食屋さんだった。

とりあえず、初めての日の話をしよう。こんな会話だった。
「百合さん、こちらが楓ちゃん。楓ちゃん、彼女が百合さん」
山本さんらしく、ぶっきら棒に紹介した。百合さんは、おしぼりを戻しながら、
「初めまして。楓ちゃんね。お噂はかねがね」と言って、にっこり笑った。
「初めまして。びっくりです。こんな素敵な方だとは想像していませんでした」
「お噂通り、ボーイッシュね」
その日は、貸切ではなかったが、ちょうど同窓会らしい会食の人達の余った席に、私と
百合さんと、山本さんの3人が座っていて、とけ込んでしまっていた。気取らない、
メニュー豊富な和食屋さんで、店構えはカフェ風で、コーヒーも紅茶もある。多いのは、
主婦や女子学生で、昼間は近隣で働く人々が多いが、満席になる事はなかった。

2度目もそこで会った。3度目が懐石料理のお店だったから、なんとなく世界がちがうぞと
感じはじめてはいた。ごちそうしてくれたにしても、高いお店で……
彼女が、上流階級側の人間だと気付くまでには、1年以上の期間が必要だった。
実業家の父親、彼を手伝う身内のほとんどがやり手で、彼女の姉も兄もお金儲けしか
関心がなかった。そういう環境に、違和感を感じながら大人になったそうだ。

彼女は、私よりかなり年上でも、見るからにお嬢様だった。つまり、若々しく、
少し浮き世離れしていて、ものごとに対して大雑把な性格だった。動きが滑らかで、
計算されたように美しかった。他人から憧れられるような存在感があった。もしや、
バレエでも習っているのかと思ったら、社交ダンスを習っていた。姿勢がいい。
少しだけ気になったのは、やせ過ぎだと言うことだ。それを百合さんに尋ねると、
「いくら食べても太れないのよ。太りたいんだけど」という羨ましい答えが返ってきた。
だが、百合さんが太れないのは、悲痛な理由があった。以前は、食べれば太る体質だった
という彼女が、自分を追い詰める事となった原因は、百合さんの恋愛事情にあった。


◾4◾

2人で会うようになり、何度目かの時に、百合さんは飛び上がって叫んだ。
「それじゃあ、あなたは私の別れた彼と知り合いということなの?」
「えっ」
「河原さんは私の恋人だったのよ」
「えええっ!?」