「恋の手ほどき」(2)

マミーはジジにこう言ったらしい。

「ガストンが、あなたに何一つ不自由しないようにお世話したいと
言ってるから、お受けなさい。失礼のないようにするのよ。
欲張りになっちゃだめよ。慎んでお受けなさいな。光栄なことなのよ」
といったところだろうか。

その場面はないが、ガストンが、ジジに、
自分の愛人になる決心はついたかを尋ねるシーンでそれがわかる。

ジジはガストンに言う。

「私のお世話をしたいそうだけど」
「返事を聞きたいんだ」
「あなたの気持ちがわからない」
「君の気持ちは?」
「あなたに何不自由なくお世話になるということは、
あなたとベッドを共にするということなんでしょう?」
「やめてくれ。ジジ。赤面する。そんな言い方」
「おばあさまには話したのに、私の前だと話せない?」

「あなたが心変わりしたら、私はどうすればいいの?
 男から男を渡り歩くなんて、私には無理よ」
「僕を好きじゃないと言うこと?」
「それはちがうわ。あなたが好きよ。あなたといると幸せ」
「……」
「今のままじゃいけないの?」

ここから、ガストンとジジのズレが始まるのだけど、それは省略。

ガストンはジジと二人で会いたいだけだ。
二人で会えるようにするため、マミーの要求に応えただけである。

だが、狡猾な大人達の思惑が挟まって、ジジとガストンの気持ちは行き違う。

大人の世界のからくりに、ジジは否定的である。
(これこそ、不純なものを、新たなものに作りかえてゆくエネルギーにほかならない)

マミーはあまりに現実をジジに話しすぎたのだ。
ジジは少女らしく自分の気持ちに率直に反応する。


だが。
結局、ジジは不本意だが、ガストンが好きだったゆえに、
愛人になることを承諾する。

(続く)