スロープは建築空間を味わう装置 そして、スロープはユニバーサル・デザイン

安藤忠雄表参道ヒルズは、スロープでも思ったよりよかったけれど。
安藤本人が取り壊された同潤会アパートの建物に愛着がある人ゆえに、
彼のやりたいことを、たぶん誰もが体感できると思う。
わかりやすいのだ。
きっと図面を何度も推敲したのだろうなと思う。

表参道ヒルズができる前、同潤会アパートのあった頃は、あのあたりはよく出かけた。
知人と演劇を見るために、お茶やお酒を飲むために出かける時、少し早めに出かけ、散策した。
隣接する公共トイレもときどき使った。(笑)

同潤会アパートは、わりと好きな建物だった。
壊してほしくない人は多かったろうに。
取り壊しの近づいた頃、メガネ屋さんがあったっけ。(ヒルズのメガネ屋さんは同じショップかな?)


ご存知のように、表参道ヒルズはスロープが主役の建築である。

スロープ……階段よりゆるやかな傾斜。

階段は目的は移動だけだが、スロープは建築空間をまるで散歩するように
味わえる装置である、ということはいろんな本に書かれている。


五十嵐太郎によると、

「スロープを発展させた現代の建築家としては、
レム・コールハースやその弟子筋の建築家集団MVRDVが挙げられるでしょう」

(「現代建築に関する16章 講談社現代新書2006年刊」p.46)


2006年は表参道ヒルズ完成の年。
21世紀でも、スロープはまだまだアイデア次第では、斬新に機能する装置
としての発展があるのではないだろうか。

またスロープは、現在ではユニバーサルデザインとして必要不可欠。
ハートビル法参照)


近代建築の神、ル・コルビジェの建物は今でも斬新だ。
彼の作品であまりにも有名なサヴォワ邸。
個人住宅なのにスロープが主役だったりする。
別荘として使っていたそうだから、ゆったりつくられているようだ。

現在、あのようなものを家の中心につくれば、どれだけ高くつくんだろうか。

お手入れにもお金がかかりそうだし。
普通の住宅にスロープなんて、贅沢なことのように思う。
(自分なら、エレベーターをつくるくらいなら、スロープをつくりたいけどなあ…)

サヴォワ邸の屋上は庭園になっていて、屋上までスロープがつながっている。
視覚的なものでなく、建築をアクチュアルなものとしてとらえたル・コルビジェ

ぐるっとまわれる間取りも、ル・コルビジェの特徴だ。
いつかル・コルビジェについて、ほんとうにゆっくり読みたい…。

彼については膨大な量の本、資料があると思う。
図面や写真だけでも、人は彼について様々な見解を持つ。

彼はほんとうにいろいろなことを、多くの作品で試しているのだ。
しかし、まあとりあえず、彼は20世紀にスロープを流行らせた人なのである。