シュールな領域@渋谷のカラオケ店にて

昨日カラオケに行った。
2時間は思ったより長くて、まだ終わらないんだねと友人Aと苦笑しあっていた。
その一時間前、居酒屋というよりは、いつもゆく格安の店より、ちょい雰囲気のいい
ダイニング・バーでお酒を飲んだのだけど。

いつもの店にゆくかどうか話し合いながら、
道玄坂から少し入った道を歩いていると、男の子の客引きが話しかけてきた。

「雨の日だから、1000円で二時間お酒類は飲み放題です」
「うーん、でもチャージとか高そう」
「じゃあ、一品無料にしますよ!」
すごい。なんというタイミングだ。我々の心は決まった。

我々はいつも客引きに連れて行かれて、ウ○タミとかワラ○ラ(あれ?同じ経営者じゃ?)にゆくのだが、
この日は、かなりおトク感のある言い回しに乗せられて、
その店に決めたのだった。
どうせ、かえって高くつくのだとわかっていながら(笑)

けれども、その日は友人はお酒を飲みたかったので、そこは正解だった。
完ぺきにモトはとって、デザートまで食べて、さて何か水分を・・・とマックを探す。

しかし、気が付くとカラオケにいた(笑)
Aとはカラオケは初めてだった。
正確には仲間たち十人くらいでカラオケに行ったことはあるが、
茶店がなくて、その時はそこに入ったのだった。

カラオケはほとんど行かない私だけど、この日は結構歌いたい歌を思いきり歌ってストレス発散した。

友人Aはの清楚な顔立ちで若く見える。
私の友人はかわいい子、綺麗な子が多いけど、そういえば・・・と
かつて親しくしていたある女性を思い出していた。

金融関係に務めていたBは誰もが振り向くような美形だった。
彼女は私にとっては遠い存在だったが、ある日曜日、
再会した書店で本の趣味が同じだったことで、
頻繁に会うようになったのだった。

瑣末なことはもう今回は割愛する。
私はレズビアンではないが、実はいくつかの
自分にもわけがわからない部分を内面に持っている。
本当の自分で生きる時、どんなことが自分に起きるかを思うと
自分を出すことは怖い。

もう大丈夫だろうか・・・・

本当の自分で生きてゆきたい。
封印した思いを外界に出して生きてゆきたい。
自分が狂気になることを恐れ、
何も考えていないふりをして生きるのはもうやめたいのだ。

私は友人Bに誘惑され、振り回された記憶を思い出す。
まだ、私が自分らしく、無垢に生きていた時期だった。

Bと私とBの彼・・・・
三人は仲良く話し終えて、ふたつの布団に三人入っていた。
Bの彼はいびきをかいて眠っていた。

Bは私の耳にひそひそ話をしたあとで、
私がうとうとまどろみ始めると耳に息を吹きかけてきた。
はっとして目覚めたが、何が起きたのか把握する前に
唇がふさがれた。
私の舌とBの舌がはじめは優しく遠慮がちに、そして次第に
ねっとりとBの舌が私に絡んできた、

どうしてこんな目にあうのかがわからないが、
いわゆるエキセントリックな女と出会うのは、そう願っていたからなんだろうか。

Bはその後、何度か音楽に私をよく誘い出した。
いつからか、イライラした表情を表すようになった。
なにか私は悪いことをしただろうか?
という思いはなかった。
私は意味もなく罪悪感は持たない。
そういった面が、Bをイライラさせていたのかもしれない。
今から思えば、Bは当時病んでいたと思う。

私の立場はBにとっては、Bの人生の語り手のようなものか、それ以下だっただろう。
シェークスピア劇のコーラス役。
Bの靴クリーム
Bのお好み焼きの青海苔
靴下の糸くず
踏まれたガムのかす

自己中心な人間にとって、背景は書き割りにすぎない。
自己中心者にとっては、状況はあって無いもの。

いずれにしても、昔の話だ。
記憶さえ定かでないものはすりきれた昔の雑誌と同じ。
時間に焼けたページの文字は読めない。

すでに私はアホである。

過去は・・・・・
いや、今でも自分の内部に潜む不滅のシュールな何かは、
時にグロテスク
時に外界を見通すフィルター
時になんの価値もない代物と化す。

伝統や社会や常識があってこそ、生き伸びることのできるそれは、
文化的なありようのことでもある。
ライフスタイルともいえる。

不滅のシュールな何かは、呪いでもあった。
出会いの奇妙さ。
挫折しか生み出さない出会い。

私はゆっくりと人間と出会うべきだったが、
運命は台風のような出会いしか与えなかった。
人生は疲労と徒労の繰り返しでしかなかった。

カラオケに私は来ていた。
少女の面影をいまだ残す女性と交互に歌う。
傷ついた心を持つAは清楚なダヴィンチの描く天使とともにいる
聖なる幼子に似ていた。

年齢を重ねても、無垢な女性はいる。
純粋なのではなく、好きだからと感情に身を任せる女。
倫理観が無いのではない。
男が悪いのだが、無垢な女は、そういう知恵は持たないように思う。

少女の面影を残すAを、私は可愛いと思いながら、少し重いかもなとも考えていた。
女性は外見ではないのだ。
歌いながらあれこれ考えていると

21時。

帰らねばならない時間である。