『魔術師』シモン……グノーシス主義をはじめたといわれている人 (&グノーシス主義について)

エスの時代にも、その良し悪しは別にして
ユニークな人がいて興味は尽きない。

使徒行伝第8章にある
(9~25節)に書かれている
シモン(シモン・ペテロとは別人)がその人。

この人物は、グノーシス主義を始めた人とされる。
それは聖書にそう書いてある訳ではない。

以下、『グノーシスとはなにか』の本のp.20から引用してみよう。


使徒行伝はもっぱら、シモンの魔術的活動の危険性を強調しているのであり、
彼をグノーシス主義者として名指しているわけではない。
しかし反異端論者たちは、シモンこそこの思想の流れの最初の代表者であり
そこから夥しいグノーシス諸派が生まれ展開したと考えている》


シモンは、ヘレネーという
目の覚めるような美女を娼婦館から連れ出し、

共に旅しながら布教したという。

魔術師シモンは
この美女の存在から創造の源泉を得て
独特の教義を構築したのだった。

ヘレネーは物質にとらわれた魂を象徴しており、
シモンにとって、自分の使命が
その魂を天使たちの束縛から解放することにあるとした。

この教義は、天使が人間を束縛するものだという前提があるようだ。

シモンの最後は、自らを神だと証明しようとして墜落死だったとある。

使徒行伝には、ペテロから神の権能をお金で得ようとして
ペテロから批判されたとある。

あのペテロが口から泡を飛ばして
さんざん罵声をあびせたのは、わかる気がする。

神の権能をお金で得ようとした時点で

なんとショボい人間性なのだろうかと感じてしまうのは
私だけではあるまい。



ここで、『グノーシス主義』に触れておきたい。

グノーシス主義』とは
ローマ帝国で2~3世紀に発展した、
知識の概念を中心とする一つの思想運動を差す。

グノーシス』とは、思想傾向を指す。
マニ教、マンダ教、カバラなどのグノーシスの諸形態。

グノーシス主義』と『グノーシス』は、区別されている。


【参考文献】
●『グノーシスとはなにか』
マドレーヌ・スコペロ著
せりか書房、1997刊