カズオ・イシグロ がノーベル賞受賞☆(*^◯^*)てなワケで、過去記事再掲………人生の黄昏 記憶への郷愁 「日の名残り」カズオ・イシグロ作 中央公論社 1990年刊 前編

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わーい(*^◯^*)
大好きな作家さんが、ノーベル賞を取りましたよん☆
という訳で、カズオ・イシグロの小説についての過去記事を再掲します。
読みやすくちょっとだけ修正しましたが、ほぼ、モトのままだよん。
元記事はこちら👇

人生の黄昏 記憶への郷愁 「日の名残りカズオ・イシグロ作 中央公論社 1990年刊 
(2011/3/3(木) 午前 5:36 投稿)
https://blogs.yahoo.co.jp/zennarumiti2004/32954240.html



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⚫『日の名残り
カズオ・イシグロ著 (土屋政雄訳)
中央公論社1990年刊


日本語に翻訳されたものしか知らないけれど、私がよく物語のお手本にするのは
カズオ・イシグロの「日の名残り」である。
これは英国人(1983年帰化した)である著者が、1989年ブッカー賞を受賞した小説である。

これは、私のストーリーつくりの基本となる要素がほぼ入っていて、とても参考になる。
この小説や、あと遠藤周作などの小説をベースにして、イメージを培養することか結構あった。
といっても、結果は似ても似つかない小説が出来上がるのだけど。

結末近くに、主人公が、夕暮れの桟橋から様々なものを眺める場面が出てくるが、
これは、主人公が過去を振り返っている意味が含まれているように思う。
潜在的に読者はそう読み取ってくれると知っていて、作者は仕掛けていると思う。

物語は、執事が新しい主人に仕える際に、昔の使用人を訪れることになるが、
その使用人のひとりが、かつて好きだった女性であり、
生真面目な執事は、ついに彼女に正直になれないまま別れるが、
その過去の失敗と、彼が再び出会うことになる旅に出るというものだ。

恋の挫折に、後悔、旅、過去を振り返る、そこで彼は、自分のしたことが、
はたして後悔すべきものであったのか、それともそうではなかったのかを振り返る。
そして、成長する。
すでに初老の主人公に「成長」という言い方は奇妙かもしれないが、
ほかに言葉が見つからない。

──物語の要素が、見事にすべて収まっている。

ラストは、堅苦しいほど実直で仕事には完ぺきな執事の主人公は、
ジョークのひとつも言えなかったばかりか、不合理だとさえ思っていた、
なのに、ジョークの味わいを理解し、受け入れるようになるのだった。
これが、この小説の重要なテーマとなっていると思う。

恋愛小説の要素もあるけれど、恋愛小説ではない。
しかし、うまくできている小説である。

ふとゲーテの「若きウェルテルの悩み」が思い浮かんだけど、それも、
よくできている小説だからだろう。
初恋、許されぬ恋、欺瞞に満ちた社会への青年らしい挫折感、再生への願いと挫折、
そして自ら破滅する。
物語としてスキがない。

あと「ファニーヒル」も頭に浮かんだ。これもよくできた小説である。
単なる俗っぽいエロ小説だけど、昔よく売れたロマンス小説より迫力がある。
よくできている、という意味がまったく違うけれど(笑)


よくできている物語は、作家がそうとうな情念を持っているように思う。
思い入れと言い換えてもいいかもしれない。

作者イシグロには、アイデンティティの問題があった。
日本語をほとんど話せない自分が、日本人なのか、英国人なのかという・・・・

情念ばかりがよい小説を生み出すばかりでもないのだ。
ノスタルジーや喪失への怖れも創作のもととなるのだ。




つづく