カッパドキアと増田政一の設計した住宅

昨日、TV番組「世界不思議発見」で、カッパドキアの岩山の住宅を見たのはタイムリーだった。

脳内@建物探訪「渡辺篤史のこんな家に住みたい」講談社1998年刊 (p.116)
引用した増田政一設計の住宅は、渡辺篤史氏がカッパドキアを連想した建物なのである。

生活の場が地下へ、そして上部に、横にと、1ボリュームごとに用途が与えられた場所は通路も兼ねている。
(というより、ボリュームどうしの繋げ方そのものが「デザイン」なのだろう)
まるで増殖したような広がり方が、渡辺氏にカッパドキアを思わせたのだろうか。

考えようによっては、家族内のプライバシーの配慮はないように思える。
と思うと、そうでもない。(住人の使い方しだいだ)

でも、そういったプライバシーがウンヌンされる前に、このM邸は、多くの人々が持つ
都市に住む人間の住居への不満や不安を、興味深い方法で解決してしまっているようだ、
というのが、勝手なワタシの感想なのだ。(^^)

建築家の「解決方法」を生活のなかで味わって、次の段階へ進みながら子どもは育ち、
大人は成熟しーーそんなご家族の未来まで想像したくなる。
(建てられて10年経過しているが)

外側を囲みながら、内部は広々(錯覚)、自由に行き来を楽しめるつくりだからである。
老人同居三世帯も、「どうやら」「なんとかすれば」可能な(笑)独立した空間も
望めそうなフレキシブルさ(というよりは大雑把さか(笑)に、私はカッパドキア的なものを見た。


外敵アラブから逃れて、長期間生活できる最深地下8階まであるという地下都市跡は、
質素ながらも、換気用の穴もあり、教会もあり、キリストやマリアの壁画も残っている。

キリスト信仰を守り抜くことこそがカッパドキアの地底住居の目的だった、という
観点から考えてみると。
自分の自由空間を外界から隔てて守り抜きたいという思いが、狭さ条件の厳しい敷地に、
家族の心の自由な広がりが実現されたような、秀逸なアイデアを盛り込まれた住居は、
やはり、カッパドキアの住居跡から伝わる精神に通じるものがあるのかもしれない。

(間取り図や写真がなくて申し訳ない)